月光にひりりと照れる貝ボタン夜干すシャツの胸のあたりに
by 村上和子
塔東京歌会のあこがれの人、村上和子さんの第2歌集の巻頭歌である。
歌集というのは、並んでいる歌だけではなく、その構成や装丁のすみずみまでまるごとふくめて作品なんだと思う。だから、「歌集なっつ」で紹介する歌は、必ず私が一冊丸ごと読んでその中からこの歌を、と紹介している。
たぶん、巻頭歌や歌集タイトルの含まれる歌というのは、作者にとって渾身の一作というか、かなりこだわりのあるものなのではないだろうか。
この歌を読んだとき、ひんやりとした電流のようなものを身体に感じた。それから何度も読み、私の愛誦歌となっている。
『ものはら』は、何版というのかわからないが、手のひらにのるくらいの小ぶりのサイズで、箱に入っている形。私にとって宝物のような歌集である。
屋上に仰ぐスターマイン恋人でありし日のような横顔見せて
夜に入りて風生るるらしき錫色の街 髪冷えてひとは帰り来
恋うというほどにあらざる思いあり霧雨のなか噴水あがる
by 村上和子