待望の江戸雪さんの第3歌集。
先ず、装丁がかっこいい。筆記体風の「Door」の「D」の字だけが銀箔。
帯文は誰によるのだろうか。
「重い扉をあけてさあ出てゆこう。たたかい、喜び、苦しみ、憎しみ、憧れ、そして愛や死とともに、私たちの生きる世界には「生」を実感できる場所が残されている。」
あとがきによると(歌集を読めばわかるのだが)、この数年のうちに大切な人を続けて亡くされたそうである。深い思いをこめたタイトルのようである。
家具屋にて子をさがしいる昼すぎをはぐれしはわれなりと気付けり
くりかえしキャロルを歌う子のそばに破船のようにねむりつづける
人工の母のようなり睡りたる間に子は外に出でゆきにけり
七色のおもちゃのラッパ鳴らす子が見知らぬひとにみえるときあり
by 江戸雪 『Door』
こどもの存在を通して浮かび上がる生きる悲しみ、自分自身に対する違和感のようなものを歌った歌に心惹かれた。
大切な人の死という悲痛な一連の中にも、次のような大胆な比喩があり意表をつかれる。
青果屋にぼんやり立てばかなしみの結晶のようなまいたけがあり
by 江戸雪 『Door』
第2歌集『椿夜』に比べ、現実的な悲しみを通奏低音に、なお一層深みをました詩情。
非常に美しい歌集である。