出会ふひとみなみづのなかよるとひるのあはひに浮かびうるうると来る
とろとろと崩れてくるしいわたくしを掬ひあげるのが今日の仕事らしい
いま列車 宇宙の闇に浮かびたり一箱分のひと載せたまま
by 万造寺ようこ
何年か前に買った『うしろむきの猫』をひさしぶりに読み返してみた。
実に不思議な感覚の歌集だと思った。表紙の白猫のデッサンも作者による。
冒頭に「草色の眼」という一連がある。心を病む息子さんについての歌で、たいへんせつない。
(注:著者自身の表現に従ったが、私は、「心」が病んでいるわけではないと思う。)
もうだれもこばまぬのぞき窓なればときに息子の眼が覗きくる
by 万造寺ようこ